赤い楽屋

五億円を持ったオカマが包丁を持って、俺の目の前で札束のごたる薄ら笑いをしている、俺は何かと浜崎あゆみのことばっかり考えてしまう。

楽屋は騒然としていた。というより、楽屋には俺と、化粧台の上にはLチキと、ガタルカナル・タカの歯の周りが印刷された雑誌が備えてあるだけだった。 薄暗かった。

電話の音が鳴った。今どき珍しいピンクの電話だった。かわいらしくって、俺は好きで仕方がないのだが。それを俺のブラウンの右手がゆっくりと手に取る。

「すいませんけどね、今は忙しいんだがな!」

「まあ、そうおっしゃらずに、タコは二匹、画鋲は強い、7は8.これなーんだ?」

「猿たち?」

「いいえ。去れ」

仕方ないので私はそこで靴を脱ぎ、また履き、小便器のことを考え、一度ボーリング場に行き、ボーリングを見る。そして、スペアの時に、画面上で踊ってくれる魚の親のことを考える。したらば、煙草を吸う、煙草を消費する速度は、新しい場所では吸う時間が長いように感じて、家の中で何本か吸うごとに吸う燃焼時間は減っていく。また、あまり仲の良くない知人や、赤の他人といるときはあまり味がしないのに、家でリラックスしているときは味がよくわかるのはなぜなんだろう、と考え、渋谷で履いた靴をインスタグラム用に367回撮り直し、電話口でこう言った。

「忙しいので切ります」

オカマは鏡を見て髪の毛をセットしている途中だった。