銀行に行ったときの話

以前、銀行強盗に入ったときの話をする。それは千葉の銀行で、斜めに建ててあった、かなり斜めだった。入ると店員たちも斜めだったが、支店長だけは直角に立っていた。支店長だからだ。支店長は支店長と書かれたネームプレートを付けていた。私はピストルを5丁持っていたので、ピストルを5丁持っていますという気持ちでいた。気持ちは伝わらない。青春のようなことを思ってしまった。ここのところ心情がティーンの頃に戻ってきている。糞を投げたり受け取ったりしていたあの頃のように。春の日差しがガラスから差していたが、直角の支店長だけがそれを受け止めていたように思う。斜めだと受け取れないからである。さて、 私はどうしても斜めになってしまうが、構わずピストルを天井に一発撃たせて頂きました。天井から跳ね返ったピストルは支店長の太ももを通過し、遅れて「冷たっ」と支店長の横の人(この文章では支店長以外の人間の人格は認めておりません)が言った。どうやら支店長の横の人間の手元に銃弾がかすめたようだ。 斜めだとさすがに当たる範囲も大きくなるのかもしれない。銀行内はパニックになるが、斜めなので出口まで走れない人が多数、女たちのパンツは見えているが、こういうときに必死な人を見るとカワイソスとは思うが、必死な人間はかなり醜く、醜い上に斜めなのでどうしても気分が悪い。
しかも銀行強盗だ、と大声で言うのが定石だが、恥ずかしくて何も言えない。仕方なくズタ袋(ズタ袋て笑)をカウンターに出して、手でお金のマークを作って薄ら笑いをしてみた。そうすると支店長は「ははは..」という顔をして、これは困ったということで、仕方なくピストルをもう一丁鳴らしてみた。鳴らしたことで、ようやく支店長も事態を呑み込み、ホイッスルで後ろの店員たちに指示をした。すると店員たちは、というか店員という立場じゃないだろ銀行員だろ、と思い直しているうちに、ズタ袋(ズタ袋て笑)にようやくお金を入れ始めた。支店長の横の男はタンクトップを着ただけの坊主の男だったが、なにせ恰幅がいい。私が若かったら、相撲を取ろうじゃないか、と言っていたに違いない。何やらポケモンの話が出来るタイプじゃない気はするが。坊主の男はゆっくりお金を入れてくれた。
私はこうして千葉を後にしたのである。