鯛として

わたしは鯛が好きです。鯛がほかの鯛と話していると嫉妬してしまいます。なんでなのかな。ぼくはほかの鯛と何が違うのかな。恋って辛いんやね。鯛の話をしてるときに恋とか言うと、鯉なのかなってなるから、あんまり言わんほうがええけどね、って鯛の松本人…

ペンギン告白時間

校舎裏は木が生い茂っている。私は放課後に、みなみを呼び出して一言言おうと思っていたのだ。ずっと言おう言おうと思っていたことをやっと言える気がする。 着いたみなみは私の顔を不思議そうに見ていた。 「急に呼び出してごめん」と私は言った。続けて、…

首だけの世界

すべての物事を、個人的に受け取らないこと。それが私の今のモットーである。たとえば、目の前で「お前はバカだな」と言われたとしても。そのことでほんとうに「俺は馬鹿なのかな」と思ったとしたら、それは俺が自意識過剰なのである。すべての物事を個人的…

先輩とジョン・カーペンター

先輩!電車の中の映像の広告って気になりませんか?自分はなんとなく見てしまうんですが、あれってゼイリブって映画を観ていたら、私たち消費者を馬鹿にしてるものだと思ってしまうんですよ。 ゼイリブって映画では広告というのは「従え」というメッセージを…

からあげになってしまった

犬がからあげになってしまった。 中華料理がからあげになってしまった。 技ありがからあげになってしまった。 あなたと過ごした日々がからあげになってしまった。 桃を配った経験がからあげになってしまった。 サマーウォーズは真夏の大自然の中でパソコンを…

峰竜太と竜雷太の違いを教えてくれる学校

「先生、峰竜太と竜雷太の違いを教えてください。」 「はい、簡単に言いますと、峰竜太は、蛇口を握るときにそれが蛇口だぞ〜ってめっちゃ想像します。 竜雷太は、蛇口を握るときにそれが蛇口だとは強くイメージしてないです。 ちょっとわかりにくいんで、具…

機関車の真似

やる気というものが何処かへ行ってしまって 耳が右にあることがありえないくらい 幸せに時間をいじれなくなり 裸足になって青少年としての生き方を 全うして行きたいのに なにもない暗闇のなかで一人で雄叫びを上げる ただ右手を動かしながら 「機関車」の真…

猿の件

「干していた猿が落ちてきたじゃないか」と風太くんは思った。干していた猿が落ちてきたとき、私はテレビで缶詰めが流れ落ちるビデオを観ていた。映像中では曲が流れていて、なんか知らん曲やったから知らん曲やわ、と隣りにいた奴に話しかけたら、そいつは…

棒と球の印象

目の前のテレビの中ではユニフォームを着た男たちが何やら遊びをしていた。右下に中3-巨6と書かれていた。中学3年生のことだろうか? その下の巨6とは何だろうか。どうやら二者が対決していることが私にはわかった。 そんなことを思っていた矢先、小さな土山…

100円は何ドルなのか?

暗い教室では扇風機だけが静かに動いていた。 歴史の教科書の年号欄に、1638年、ガリレオ・ガリレイが、雑誌『新科学対話』を発行と書いてあった。 1638年、想像もつかない。 科学の対話?ガリレオは鉄を触ったりしながら 「へえ〜あなたはそんなことを考え…

南国馬術週間

派遣の、ずっと立ってるだけの劇場もぎりのバイト終わりの疲れたあとの電車に乗った、ふくらはぎの痛みを感じながら座席に座った。前を見ると、何にもなれなかった松田翔平みたいな人が、座席に座っていた。松田翔平よりも眉毛が太いだけだった。なぜそう感…

燃える背中

軍服を着た男たちが私に向かって話している。 「星々が何個もあるような場所ではきっと放火をしたら悲しむのだ」 とかなんとか。技巧派のような口ぶりで話す彼らはきっと工事現場。 かれらはカレーを食べるのが好きらしくて、カレーの話ともなるとカレーをイ…

小さな恐怖

二日に一度、といってもそこまで多くない時間、石橋遥は意味のないことを考えた。たとえばオアシスの「Live Forever」を聴くとき、聴くときというより聴き始める瞬間に、昔のことをふと思い出すこと。この曲を聴くとき、毎度、昔バンド募集で連絡してきて仲…

ある日の傍聴席

私はある男女のうち、女Aが男Bに腹部を刺された事件について、裁判所で傍聴していた。 裁判官は女Aの弁護人に向かって、話すよう求めた。 ...Aの弁護をいたします。まず、AとBの関係について。 AとBは肉体関係にあった。また、トサキントをポケモンと認めな…

お茶のレビュー

家の台所にパスタを入れているプラスチックの缶があるんだけど、そこにパスタを入れているわけです。パスタを入れるためのその缶にパスタが入っているわけで、それを用いてパスタが入っている。これパスタ入っている容器。 うちの家のコンロ上にやかんがあっ…

切ない(こと・言葉)しりとり

しりとり→淋病の知らなさ→3回以上の小細工→クックパッドが登場するテレビドラマ→マリオの事→トングが回ってくるまで待つ→つんく♂の日曜→馬の頭の毛→けつの手術→土田晃之の所作→さつまいもを割る機械→ いちじくの墨絵→映画→ガトーショコラの上の粉が落ちてい…

時間装置(1)

AはBに尋ねる。 A「あの、道があるとして、道っていっても、どんな道でもいいんだけど。」 B「どないやねん」 A「まあ、道があるとして、人生って道みたいなものじゃん。次どっちの道に行こうかーみたいなね、そういうのってあるじゃん。」 B「この話自体が…

たわし

OK。たわしをこちらへ向けてくれ。そしてその後「たわしを向けた」と言ってみれくれ。 おい、どうした。なぜ、たわしをこちらに向けない。たわしをこちらに向けてくれ。 それはたわしじゃない。清涼飲料水だ。 なぜたわしじゃないんだ。形が好きなんですよね…

官能小説(大学篇)

朝子の手に、太くて硬いペットボトルが握られた。右手親指でゆっくりと包まれたペットボトルには、白濁した濃い液が溜まっている。 朝子はそのペットボトルを念入りに、丁寧に愛撫し始めた。 窓からは朝焼けの陽が生温く光っていた。ペットボトルは今し方冷…

みきちゃんの鶴

顔を赤らめた井上みきは 「そんなことないよ」 と言った。クラスの子供たちが、みきちゃんの作った折り紙の鶴を見て、 「すごい」「よくできてる」 と口々に言いました。鶴といっても普通の鶴ではなく、大きな鶴だった。私も、その鶴を見てすごいと思ったが…

ベーコンの歌を聴け

朝顔くんは絵を描いていました。朝顔くんに描かれている絵は、赤い色で描いていた。「彼は何を考えていたのだろう」 私は夜になるとそのことを記憶から離さなかった。朝顔くんが描いた絵が、先生は良いと言う。「足りない」。 くすんだ色がした制服を着たひ…

友人Kについて

朝がくる。朝はいつも、誰のことも気にしないでやってくる。夜はくるまでの時間、くるまでに心の準備ができている。だんだん時間がたって、夜になることがよくわかる。だけど朝は、気づくと朝がやってくるので、いつも悲しい気分になる。悲しい気分といえば…

恐怖!母親の実態

母親が冷蔵庫に付箋でメモを残していた。 「使い勝手がいい印象」 おそらく冷蔵庫に対して言っているのだろう。使い勝手がいいことは俺にもわかっているので、なるほどと思い、了解しましたと付箋を剥がした。 次の日の夜、母親がどうやら買い物に出た後、ま…

お湯は買わなくていい!〜わたしの成長ノート〜

こんにちは、石川と申します。 突然ですが皆さん、お湯を沸かしたことがありますか? 突然言われて驚いているでしょうか。あなたがお湯を沸かしたことがないのは、恥ずかしいことじゃないのです。 それだったら、今まで私が悩んできたお湯を沸かしてはいけな…

病室の時間

雪が降るのは、冬だけなのに、夏にはなにもないよね、日差しだけがある。 あの太陽のひかりをかんじていると、もうすぐじぶんが死んでしまうなんて思えなかった。佐藤はそろそろ死ぬことをわかっていた、昔のことを思い出す。 この時間ともおさらばで、そろ…

銀行に行ったときの話

以前、銀行強盗に入ったときの話をする。それは千葉の銀行で、斜めに建ててあった、かなり斜めだった。入ると店員たちも斜めだったが、支店長だけは直角に立っていた。支店長だからだ。支店長は支店長と書かれたネームプレートを付けていた。私はピストルを5…

ペンギンと戦う男

昨日、空を見たときに「都会にはこんな風景がなくていいな」と思った。実際には都会には云々と思ったわけじゃなく、ああ、という気持ちだけを感じた。 久々にこの風景を見た、という気持ちだった、ほぼ自動的に思った。アニメで見るような入道雲だと思った。…

無花果

服についた皺が、私の付けた皺だということが納得できない。 私は昔は麻感がある素材の服を着るのが好きで、そういう服を買って木で出来たテーブルを立って触った、観葉植物が背後にある。私はその頃、リネンという言葉を知らなかった。フローリングを裸足で…

プラスチックの欠如が何度も目に被れる

当時私のツイッターのアイコンは牛乳パックに顔がついたキャラクターのアイコンで、けっこう好きだった、でも誰かから 「そのアイコンにしてる人、めっちゃ見る」 と言われたのが何となく頭に残っていて、しばらくして変えた。 そういうふうにじぶんを他の人…

夏には夏の..

テレビがあって、それを見ている俺。 俺の素肌。 横顔。横顔には少しの微笑み。 サッカーの番組が流れている。 ボールが画面上で上に動いたり下に動いている。 俺、集中している。 サッカー、続いている。 液晶の、荒い画像が見える。荒いサッカーボールも蹴…