機関車の真似

やる気というものが何処かへ行ってしまって

耳が右にあることがありえないくらい

幸せに時間をいじれなくなり

裸足になって青少年としての生き方を

全うして行きたいのに

なにもない暗闇のなかで一人で雄叫びを上げる

ただ右手を動かしながら

「機関車」の真似をしている

日当たりのいい場所にいることなく

足りない頭をでっちあげて

それからはただ純粋に傘を買ったり

それを触ったりしているうちに

すぐに夕方になって

植物が家にあったりしたら

それはそれで斜めになっていれる

と思っていたのだが

ベッドには百科事典が一から十まであるだけで

百均に行ってからはナイアガラのことを思い出して

傘をまた触って明日も雨が降るならそれはそれで

上から下まで百円ライターで埋め尽くされた火葬場に

一から十まで言ってもわからない泥に

まみれた胡椒を振りながら

それが来週元気になるまでは移動していることで

 

コンビニの傘置き場に巨大な煙草が刺さっているのを見た

 

イラストレーターが静かに肩叩きをするのを見た

面倒くさそうに髪を払った

 

部屋では機関車の真似をしているだけなのだが

鉛筆を物欲しそうに見ている女が

静かに猫を飼っているので

蛍光灯を付けたまま寝ると

ライブハウスの音源が入ったメモ帳に

電子タバコの要領で靴を歯磨くと

メッシが天才のように泥をこすり

それが耳元で帰りなさいと囁く

 

演奏家は嫌なものを見ない

手首から散髪した頃の写真が出てきた

駅員が

援助交際はやめとけと言う

デイゴの花の歌を聴きながら猫を見なさいと言う

 

目元に煮沸したあとの俺がいるから

伝説のごとく状態を見ていけと言った

嘘の電車に乗るから

俺たちは帰ってこれるだろう

 

それだけ言い残して

演奏家は飯を食べて寝て座った