無花果

服についた皺が、私の付けた皺だということが納得できない。

私は昔は麻感がある素材の服を着るのが好きで、そういう服を買って木で出来たテーブルを立って触った、観葉植物が背後にある。私はその頃、リネンという言葉を知らなかった。フローリングを裸足で歩く。木目が薄い茶色の地面は少し油断をしたら転びそうになる。

表に出ると工事の音が聞こえた。甲高い鉄と鉄がぶつかり合う音や鉄に摩擦を加える大きな音が響いている。建物自体は小さいが、外観は黒い麻の素材で隠れて見えない。

いつも歩く緑道に入ってしばらく歩く。緑道から一瞬出る車道の近くのゴミ捨て場に、赤いなにかが散乱していた。黄色と白のポールの下にも飛び散っている。よく見ると無花果だった。私は無花果を食べたことはないが、画像で見たことがある。無花果三百六十円は鳩によって食べられた。